向田邦子を語る(2005.6.7放送分)

きっと「爆笑問題のススメ」で一番呼びたい作家は、この人に違いありません。爆笑問題・太田が、今度はNHK向田邦子の魅力を語っていました。
向田邦子は「寺内貫太郎一家」「あ・うん」など、ホームドラマを得意とする放送作家でした。飛行機事故で伝説の人となり、今でも根強いファンが存在しています。本屋に立ち寄った際、時々向田邦子を特集した書籍が新刊で出ているところを見ると、人気の高さを感じます。映画雑誌の編集者からテレビ業界への転身。マスコミでばりばり働きながらも、ファッションや趣味や生活でもこだわりのある方で、その時代の女性には憧れの的であっただろうと想像されます。
前置きが長くなりました(^^;さて、太田光があげる、向田作品の好きなところ。それはリアリティにあるといいます。

  • 幸福と不幸が同時に描かれる点。不幸のベースの上に幸福が成り立っていて、いつ幸福が崩れ去っても可笑しくないようなところに、スリルを感じるそうだ。
  • 「セリフではなく絵で表現する」手法。電話では全く違ったことを話ながら、曇ったガラスに大きく手で「父」と書くシーン。作品のテーマでもある「父」が大きく書かれ、心情がよく表せている上手い手法だと感じたとのこと。
  • 向田邦子のリアリティ。茶の間で家族で何かについて語っていても、実際には横道にそれたりするもの。女性は特にその傾向が強く「脇道にそれないと本質は話せない」と言っても過言ではないくらい。向田はそのリアリティを作品に表した。
  • いい年した大人が道を踏み外す危うさ。中学生にとって、それは衝撃だったようです。「うちの父親も浮気してるんじゃないかな?」。自分の生活にも起こりうる可能性にスリルとリアリティを感じたとのこと。

そういう作品がリアリティのある作品なんだ。そういう作品をいいと思うようになったそうです。
私のこだわり人物伝。来週は「第二回 男は女に叶わない」のテーマで、太田光、再び登場です。
番組では、向田邦子の対談映像も流れていました。本を全く読まない私ですが、唯一向田邦子の短編だけは、読んだことがありました。太田光と同じように、多感な10代の時期に出会い、大人の弱い部分を「かわいく」描いた作品。日常にありふれた、ささやかなようで、一大事なこと。「大人とは?」「ドラマとは?」「幸せとは?」価値観を変えてくれた作家さんでした。関連書籍もつまみ食い。しかし、向田邦子を映像で見たのはこれが初めて。もう少しきつい人なのかな、と思ったら、優しい穏やかな声。しかし、一言終わると、くぃっと相手を見て「○○でしょ?」その反応をよく見る。目がまっすぐ相手を見ていて、すごく聡明な方という印象でした。
向田邦子作品がリアリティにあふれてるといっても、ある回想集で、恋愛に関する描写についてリアリティがない、なんて話を聞いたことがあります。
向田邦子は女姉妹の長女として育っていて、放送作家に転身してからもしばらく実家にお世話になっていた、というバックボーンがあります。やはり、家族の中で暮らしていたからこそ、リアリティのあるホームドラマが書ける。逆に、これだけ回想集なんかが出ているのに、向田邦子に関して浮いた話が明確に出てこない。恋愛に関しては親しい人にもあまり話さなかったそうなんです。恋愛をしてなかったわけではないけど、人に語る必要がなかった。客観視する必要がない。恋愛に関しての「言葉」が、非常に少なかったんじゃないかと思います。
お笑いのネタもそうだけど、作品というのは自分の言葉の分身なんですよね。だから心配なんですよ。作家さんも芸人さんも、これだけ自分をさらけだして恥ずかしくないのかなぁ〜なんて。劇団ひとりとか、もう、大丈夫か!?って(笑)
あらら、太田光より、語ってしまいました(笑)
追記:向田邦子の恋人に関して、最近ドラマをやっていたんですね。見ればよかったなぁ〜。
http://www.tokyo-kurenaidan.com/mukoda5.htm