爆笑オンエアバトル(おぎやはぎ編)

「苦労なんてすると、芸が臭くなるだけだ。あんな好きなことをして、お金を稼げていいなと思われなければならない」
面接の達人でおなじみの中谷彰宏の著書にこんな一節があった。好きなことをして、お金を稼げていいな、と思わせるのは、おぎやはぎ。サラリーマンを辞めて芸人に。「売れなくても、細々と今くらいのペースでいければ」なんてテレビでの発言を聞くと、よっぽど好きなんだな、という印象を受ける。私がおぎやはぎを意識して見るようになったのは、2003年の正月の特番だった。一発ギャグにつっこめ、というお題に挑むのは矢作。ダチョウ倶楽部の上島が、2つの漆塗りのお椀を両胸に当てて、「へっぽこ、へっぽこ」という。会場が「???」という空気に包まれる中、矢作が「困るんだよね、そういうの!」と一言。会場が大きな笑いに包まれた。ボケをついてツッコむのではなく、この空気全体にツッコむ若手。この人たちは、お笑い界に呼び寄せられるように入ったんだろう、そう思っていた。
ビデオは、おぎやはぎ1999〜2002の記録。矢作のつっこみがうまくなっていく様が見て取れておもしろかった。はじめはふつうにつっこんでいるのだが、そのうち、おもしろい言葉でつっこもうという試みをはじめる。おもしろい言葉をチョイスすることに力を入れて、時折、ツッコミとしてお客さんに伝わっていない時もあるのだが、そのうち、おもしろい言葉できちんと成立するようになってくる。間も後になるにつれ、よくなってる。
矢作がこんなにも努力を重ねていたとは。お笑い界に呼び寄せられたんじゃなく、食らいついていったのだ。それを1回1回の出演で全く感じさせない、それは彼らがもう立派なプロである証拠だ。これからも、「あんな好きなことをして、お金を稼げていいな」そう思わせ続けてほしい。
…あれ?ビデオの感想になってないや。ビデオの感想を。最近のおぎやはぎのネタは、漫才形式で、小木がいろんな職業に挑戦するという設定に固まってきているが、本ビデオは、ほかの設定の漫才やコントなどを収録。サラリーマン出身だけに、中流階級の視点を巧みについた漫才は彼らの持ち味の一つ。微妙なブランド名を出すあたり、彼らしかできないなぁ、と思う。全体として発展途上のネタが多いが、小木のボケにはやはりオリジナリティを感じさせる。